
事業承継・M&A補助金を“通す”ための完全ガイド(2025年版)
執筆:中小企業診断士 馮 智顕
要はココ。趣旨に合うストーリー+数字まで落ちた具体計画+現場のリアリティ+わかりやすい言葉。
この4点に振り切れば、申請の手応えはグッと上がります。
1. まずは全体像(いまの制度はこうなってます)
- 制度の目的
事業承継やM&A(事業再編・統合、承継を伴う創業を含む)をきっかけにした挑戦を支援。設備投資、専門家活用、PMI(統合)、廃業・再チャレンジまでをカバーします。(中小企業庁) - 最新の公募(第12次:令和7年=2025年)
受付は2025/8/22(金)〜9/19(金)17:00(予定)。申請は**電子申請(jGrants)**のみ・gBizIDプライムが必要。(中小企業庁) - 公式ポータル
詳細・様式・FAQは事務局サイトに集約されています。(事業承継・M&A補助金)
2. 枠ごとの“サクッと比較”(これを見れば方向性が決まる)
① 事業承継促進枠(親族/従業員承継×投資)
- 中身:5年以内に親族内承継 or 従業員承継を予定する方の設備投資・改装などを支援。
- 補助率:1/2(※小規模は2/3)。
- 上限:800万円(賃上げ達成で1,000万円)。(中小企業庁)
② 専門家活用枠(M&Aの仲介・FA・DD等)
- 中身:仲介・FA費用、DD、セカンドオピニオン、表明保証保険など。
- 補助率:買い手1/3・1/2・2/3/売り手1/2・2/3(条件により変動)。
- 上限:買い手 600〜800万円(DD加算で+200万円可)、※“100億企業要件”なら最大2,000万円/売り手 600〜800万円。
- 注意:M&A支援機関登録制度に登録された仲介/FAの費用だけが対象。(中小企業庁) (中小企業庁)
③ PMI推進枠(統合の専門家+投資)
- 中身:統合専門家の活用や統合に必要な設備/外注等。
- 補助率:専門家活用1/2、事業統合投資 1/2(小規模は2/3)。
- 上限:専門家活用150万円/事業統合投資800万円(賃上げ達成で1,000万円)。(中小企業庁)
④ 廃業・再チャレンジ枠(きれいに畳んで次へ)
- 中身:廃業支援費・在庫廃棄・解体費など、再チャレンジ前提の廃業費をサポート。
- 補助率:2/3 or 1/2(併用する他枠の補助率に連動)
- 上限:150万円。
- ポイント:**他の3枠と“併用申請OK”**です。(中小企業庁)
迷ったら:親族/従業員承継+投資=①、M&Aの手数料/DD=②、統合の体制づくり・投資=③、廃業費用=④(他と併用可) が基本線。
3. 申請の流れ
- gBizIDプライム取得 → jGrantsで申請口を確保(2〜3週間かかることあり)。(中小企業庁)
- 骨子→見積→様式アップの順で整える(必要書類・手引き・チェックリストは事務局ページにまとまっています)。(事業承継・M&A補助金)
- 交付決定後に発注・支出が原則(起算日・対象期間は各枠の公募要領/交付規程に従う)。(事業承継・M&A補助金)
4. “通る計画”の作り方(枠別のストーリー骨子テンプレ)
A. 事業承継促進枠(設備投資)
- 結論1文:「承継後1年で○○工程を自動化し、人時△%削減+売上○○」
- 現状の事実:タクト/歩留まり/停止時間/人繰り(ログで)
- 打ち手:具体的な設備仕様・I/F・検収基準(例:Ra0.2→0.05、能力45sec/個)
- 効果の式:単価×数量=売上/粗利=売上×率/回収=自己負担÷月次CF
- 体制:誰が要件定義・FAT/SAT・検収を担当
- 賃上げ:制度の要件と時期・方法を書面化(就業規則・賃金規程)。(中小企業庁)
B. 専門家活用枠(M&A実行費用)
- 結論1文:「○月LOI→○月DD→○月クロージング、統合初年で粗利+△pt」
- スコープ:仲介/FA(登録機関)、DD、RWIの範囲・費目を明記
- 相見積:登録済み支援機関から同等条件で2〜3社(レーマン/最低報酬/成功定義を横並びに)
- KPI:交渉段階の里程標(NDA→IM→LOI→DD→最終契約)/成約後の粗利・CV
- リスク:価格乖離・DDでの指摘・許認可(株式譲渡/事業譲渡の向き)への代替策。(中小企業庁)
C. PMI推進枠(統合の仕上げ)
- 結論1文:「在庫回転+0.6回/年、欠品率−1.5ptをWMS+生産計画で実現」
- To-Be:**統合後の業務設計(組織・IT・KPI)**を1枚で
- 施策:専門家ロール(PMO/人事制度/評価/IT移行)+投資パート(MES/WMS/改修等)
- KPI:初回合格率・能力・在庫・LT・離職率 等(月次トラッキング)。(中小企業庁)
D. 廃業・再チャレンジ枠(併用OK)
- 結論1文:「旧○事業を清算し、○年○月新事業へ再挑戦」
- 廃業範囲:在庫・設備・契約・人の扱い(費目は要領の定義に合わせて)
- 併用の設計:②や③と同時申請で、**廃業費(150万円上限)**を上乗せ。(中小企業庁)
5. よくあるNGと回避策(減点ポイントを潰す)
- 登録外の仲介・FA費用を計上:登録制度に未登録の支援者の手数料は対象外。申請前に登録検索で確認。(中小企業庁)
- “誰が・どこまで”が曖昧:**役割分担(自社/外部)**を明確に。検収基準もセットで。
- 費目の線引きミス:②は専門家費用中心、①③は設備や外注も対象。要領と交付規程で定義を確認。(中小企業庁)
- タイムラインの誤解:対象期間外の支出は原則対象外。交付決定→発注・支出の順を徹底(各回の要領/規程で起算日を確認)。(事業承継・M&A補助金)
6. 申請チェックリスト
- 結論1文(何を、いつまでに、どれだけ良くするか)
- KPI(売上・粗利・人時・LT・在庫回転など“式”で置く)
- 仕様書(性能値・I/F・検収基準)+同条件の相見積
- 費目整合(枠の定義どおり/登録機関の確認)(中小企業庁)
- スケジュール(NDA→LOI→DD→契約→PMI/設備はFAT/SATまで)
- 賃上げ(該当枠は要件・誓約書の準備)(事業承継・M&A補助金)
- gBizID→jGrants動作確認(締切から逆算)。(中小企業庁)
7. スケジュールと一次情報
- 中小企業庁:第12次公募の概要・日程(枠別の趣旨・上限・補助率)。(中小企業庁)
- 事務局ポータル(制度トップ)(最新のお知らせ・様式・FAQ)。(事業承継・M&A補助金)
- SMRJの案内ページ(4枠公募の告知)。(中小企業庁)
- “専門家活用”の公募・資料置き場(11次〜)(手引き、チェックリスト、交付規程など)。(事業承継・M&A補助金)
- M&A支援機関登録制度(概要・検索)(登録要件・検索DB)。(中小企業庁)
- jGrants(電子申請)。(jgrants-portal.go.jp)