
小規模事業者持続化補助金の徹底解説(2025年版)
執筆:中小企業診断士 馮 智顕
結局だいじなのはこの4つ。
①公募要領の趣旨に沿ったストーリー+②数字まで落ちた具体的計画(段取り・KPI)+③事業の想いと現場のリアリティ+④誰でも分かる言葉。
ここを外さなければ、採択率はグッと上がります。
まず「制度の全体像」を3分で
- どんな補助金?
小規模事業者が「販路開拓」やそれに併せて行う業務効率化に取り組む費用を一部支援。目的は生産性向上と持続的発展です。 - 上限額・補助率(一般型・通常枠)
上限50万円、インボイス特例で+50万円、賃金引上げ特例で+150万円、両方満たすと+200万円(最大250万円)。補助率は原則2/3(賃上げ特例で赤字の場合は3/4)。 - 対象経費の主な例
機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費、旅費、新商品開発費、借料、委託・外注費。 - 申請スケジュール(第18回)
公募要領公開:2025/6/30、申請受付 10/3〜締切 11/28 17:00、様式4(事業支援計画書)発行の受付締切 11/18(予定は変更の可能性あり)。(小規模事業者持続化補助金事務局) - 申請方法
申請は**電子申請(Jグランツ)**のみ。gBizIDプライムが必要(取得に数週間かかる目安)。(r3.jizokukahojokin.info) - 誰が対象?(小規模事業者の定義)
商業・サービス業(宿泊・娯楽除く)従業員5人以下、宿泊・娯楽業/製造業その他20人以下など。詳細は要件欄を確認。(持続可能館)
「使える取組」ざっくり例とNGの落とし穴
使える例
- Web/EC・予約:サイト改修、EC・予約機能追加、LP制作、コンテンツ整備、広告運用 等(=ウェブサイト関連費/広報費/機械装置等費の組合せ)。
- 展示会・商談会(オンライン含む)の出展費。
よくあるNG・注意
- 交付決定前の発注・契約・支出は対象外。採択通知が来ても交付決定通知前はNGです。(r3.jizokukahojokin.info)
- 自動車・バイク・自転車など汎用性が高いものは対象外(“目的外使用になり得る汎用品”は不可)。(r3.jizokukahojokin.info)
- 中古品は50万円(税抜)未満、事業者からの購入、2者以上の相見積など条件あり(個人・オークションからの購入は不可)。(r3.jizokukahojokin.info)
- ウェブサイト関連費の上限:**補助金総額の1/4(最大50万円)**まで。単独では申請不可。※最新公募要領・ガイドで必ず確認。(r3.jizokukahojokin.info)
提出までの流れ(超ざっくり)
- gBizIDプライム取得 → 2) 事業計画作成(様式1・2 ほか) → 3) 商工会/商工会議所に「様式4(事業支援計画書)」を依頼・交付 → 4) Jグランツで電子申請。様式4の発行は締切10日前が目安なので前倒し必須。
必要書類の一部(抜粋):様式1(経営計画)、様式2(補助事業計画)、様式5(補助金交付申請書)、宣誓・同意書、**様式4(事業支援計画書)**ほか。
審査の観点を“翻訳”すると、こう書け
公募要領の「採択審査」は、ざっくり以下を見ています(太文字が“刺さる書き方”の肝)。
- 計画の妥当性:自社の現状・強み弱みを自分の言葉で把握しているか。
- 方針とプランの道筋:狙う市場や顧客像が明確で、手段→成果がつながっているか。
- 事業計画の有効性:実現可能性が高く、技術/ノウハウ/アイデアが新しい価値につながるか。
- 経費の透明性:必要性・積算根拠・明確さ(誰が見ても妥当な見積)があるか。
- 加点の有無:賃上げ(赤字賃上げ加点)、事業環境変化、東日本大震災関連等の政策加点。
“通す”ための書き方テンプレ(そのまま骨子に)
タイトル:○○(新商品/新サービス)で△△市場に攻める販路開拓計画
①現状と課題:
・自社の強み/弱み(3点)
・顧客の変化/競合の状況(数字や現場の気づき)
②狙う市場と顧客像:
・主ターゲット(年齢/地域/用途/購入動機)と購買動線
③打ち手(施策):
・施策A(例:EC新設+広告)= ねらい / 実施内容 / 期待KPI
・施策B(例:展示会出展)= 同上
④体制・外部パートナー:
・自社の役割と外注の役割、担当者名と工数
⑤スケジュール:
・月別の発注→制作→検収→掲載→計測
⑥KPIと効果見込み:
・単価×数量で分解(例:平均単価6,000円×新規月200件=月商120万円)
・成長曲線(1〜3か月は学習、4か月目からCPA改善等)
⑦リスクと対策:
・納期遅延→代替制作体制 / 広告CPA悪化→クリエイティブAB 等
⑧経費明細と根拠:
・見積社名・仕様・内訳・妥当性コメント(相見積が望ましい。中古は要2社見積など)(r3.jizokukahojokin.info)
✍️コツ:横文字は必要最小限で。「だれが・いつ・どこで・いくらで・どう動くか」を短文で。
ウェブサイト関連費の“よくある誤解”
- いくらまで? → 補助金総額の1/4(最大50万円)。例えば上限50万円の交付なら、ウェブ費は最大12.5万円まで。単独計上は不可。※必ず当該回の要領・ガイドで最新確認。(r3.jizokukahojokin.info)
- 広告はどこに入れる? → 目的に応じて広報費またはウェブ関連費。サイト構築や機能拡張はウェブ、印刷物や看板は広報寄り。
「加点」を取りにいく
- 賃上げ特例:事業場内最低賃金を一定以上引上げ。赤字でも補助率3/4可。
- インボイス特例:適格請求書発行事業者の登録等で+50万円。
- 政策加点:赤字賃上げ、事業環境変化、東日本大震災関連など。どれを狙えるかを早めに棚卸し。
スケジュール逆算の“実務メモ”
- gBizIDプライム申請(目安3〜4週間)→ Jグランツ動作確認。(r3.jizokukahojokin.info)
- 見積集め(中古なら金額問わず2社以上、100万円超は相見積推奨)→仕様・範囲を文章化。(r3.jizokukahojokin.info)
- 様式4(商工会/商工会議所)の依頼は締切10日前までがデッドライン目安。余裕を。(小規模事業者持続化補助金事務局)
- 交付決定前は発注厳禁。採択通知=GOサインではありません。(r3.jizokukahojokin.info)
よくある質問(超要点)
- 商工会と商工会議所、どっち?
事業所の所在地で窓口が分かれます(いまは申請サイトが共通化)。(jizokuka-portal.info) - NPOもOK?
一定要件を満たす特定非営利活動法人も対象。 - 採択の基準は?
計画の妥当性・実現性・市場性・費用妥当性など。**“数字の根拠”と“施策→効果の筋”**が命。
まとめ:補助金は“資金”であり“企画の推進剤”
- 趣旨に沿ったストーリーに、数字まで落とした具体計画、現場のリアリティ、分かりやすい言葉を乗せる。
- 加点を取りにいく/NGを踏まない(交付決定前発注・汎用品・中古の条件違反等)。(r3.jizokukahojokin.info)
- 締切は2025/11/28(金)17:00(第18回、予定)。様式4の発行締切は11/18。まずはgBizID→Jグランツの準備から。(小規模事業者持続化補助金事務局)
公式情報リンク(確認用)
- 事務局公式サイト(商工会議所地区)・最新お知らせ/スケジュール。(小規模事業者持続化補助金事務局)
- 事務局公式サイト(商工会地区)・スケジュール等。(持続可能館)
- 第18回 公募要領(PDF)。
- Jグランツ公式。(jgrants-portal.go.jp)
- ガイドブック(ウェブサイト関連費の上限等の記載)。(r3.jizokukahojokin.info)
補助金を活用して、事業の飛躍を
補助金は国が政策的意図をもって企業に対して用意した制度です。大きな設備投資や出費をする際、それが補助金の対象となりうることも多いです。
資本力に乏しい中小企業が、イノベーションを起こすにあたって、まず検討すべき資金調達手段です。
現在補助金を申請している多くの企業が、複数回の申請経験がある常連組といわれています。一度申請を経験することで、メリットを実感し、手続きの流れが把握できるため、また別の機会にも補助金を使って事業を進めることが抵抗なくできるようになります。
小規模事業者持続化補助金の申請は、商工会議所・商工会に相談しながら、ご自身で進めることも可能です。AI異業種イノベ会のDiscordでも補助金の情報交換をするのも一案です。
皆様の事業の飛躍をお祈りしております。