助成金・補助金

ものづくり補助金

ものづくり補助金の概要と「通す」ための完全ガイド

執筆:中小企業診断士 馮 智顕

大事なのは、要領の趣旨に沿ったストーリー具体的な計画(数字・段取り)事業の想いと現場のリアリティわかりやすい言葉
この4点を外さなければ、採択の可能性はグッと上がります。この記事では“実務で通る”形に落として解説します。


1. まずは全体像(制度のキホン)

これはどんな補助金?

正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」。中小企業・小規模事業者が新製品・新サービスの開発生産プロセス改善(省力化・高付加価値化等)に取り組むための投資を後押しする制度です。毎回の締切ごとに公募要領が公開され、そこで対象や条件・細かいルールが定義されます。ものづくり補助金総合サイト

スケジュール(直近例)

申請方法(オンライン)

申請はJグランツで行います。事前にgBizIDプライムが必須。発行に2〜3週間程度かかることがあるので、まずはここから。ものづくり補助金総合サイト+2ミラサポplus 補助金・助成金 中小企業支援サイト+2

超重要:交付決定“前”の発注・契約・支払いは補助対象外。採択=OKではありません。「交付決定の通知」まで絶対に待つ。ものづくり補助金総合サイト


2. 補助対象の考え方(OK/NGのツボ)

代表的なOK(例)

  • 新製品・新サービス開発や、工程の自動化・省人化・品質向上につながる機械装置・システム導入

  • 試作・実証に要する外注・委託(要件内)

  • 補助事業の成果を事業化するための一部の関連経費(範囲・条件は要領で確認)

代表的なNG(例)

  • 交付決定前に発注・支払い済のもの

  • 趣旨(生産性向上・付加価値向上)から外れる汎用的消耗品や私的利用の恐れがあるもの など
    (細目の線引きは公募要領が一次情報。都度該当する根拠条文を拾って書くと強いです。)ものづくり補助金総合サイト


3. 申請〜採択後の流れ(迷わない5ステップ)

  1. 骨子づくり:結論→現状課題→打ち手→効果→体制(テンプレは後述)

  2. 仕様書化:機能一覧、工程・能力、要求性能、KPI計測方法を1枚に

  3. 相見積:同等仕様で2〜3社(価格妥当性の根拠)

  4. Jグランツ入力:事業計画・財務・見積・エビデンスを揃えて申請(gBizIDプライム必須ミラサポplus 補助金・助成金 中小企業支援サイト

  5. 採択→交付申請→交付決定:決定通知後に発注・契約・支払い→実施→実績報告→検査・精算。ものづくり補助金総合サイト


4. “通る”ストーリー骨子テンプレ(コピペOK)

やりたいこと(結論を一文で)

例:多品種・小ロットのリードタイムを30%短縮するため、XYZ工程を自動化モジュール+スケジューラで再設計し、粗利率+5ptを目指す。

現状の“事実”(数字&現場の声)

  • 型替え45分/回、1日6回270分停止

  • 不安定な手作業工程に**歩留まり92%**のボトルネック

  • 納期遅延月3件、営業側の機会損失感

打ち手(要領の趣旨:生産性・付加価値に直結)

  • 工程自動化:ターンテーブル+画像検査+排出分岐で人依存を除去

  • 能力増強:段取り短縮治具/スケジューラ連携で停止時間−40%

  • 品質安定:インライン検査で歩留まり95→99%

効果の見込み(“式”で置く)

  • タクト:60秒→45秒(能力+33%

  • 人時:1ライン**−1.2人相当/日** → 人件費▲○円/月

  • 粗利:不良率3%改善 × 月間出荷○個 × 粗利単価○円 = +○円/月

  • 回収:投資○円/補助後自己負担○円 → 月次CF+○円回収○か月

体制(人と責任の所在)

  • 製造課長(要件定義・試運転判定責任)

  • 生産技術(仕様策定・受入検査基準)

  • 情報シス(MES/スケジューラ連携)

  • ベンダ(設計・据付・教育)

スケジュール(交付決定から逆算)

  • 交付決定+1週 発注 → +6週 FAT → +10週 据付 → +12週 SAT・本稼働

  • 週次KPI:稼働率/不良率/段取り時間/実タクト

想い(リアリティ)

“作業者の熟練頼み”から脱却し、誰でも安全に安定品質で作れる工場へ。
納期の約束を守り、値引き競争でなく機能価値で選ばれる存在になる。


5. 書き方のコツ(審査員の脳内順序に合わせる)

  • 抽象は1文、即具体

    • NG:生産性を高める。

    • OK:型替え45分→20分に短縮し、1日停止−150分

  • 理由→結論で置く(「課題→対策→効果」の順に)

  • 主語を“誰が”に固定(生産技術が…/製造課長が…)

  • 図で因果(工程図・稼働率の前後比較・能力曲線)

  • 一次情報で裏づけ(現場データ、ログ、検査記録。公募要領条文の該当箇所も併記


6. 数字の置き方(妥当性の出し方)

工程能力

  • 能力(個/h)= 3600 ÷ タクト(秒) × 稼働率

  • ボトルネック工程の前後差を図示(改善前→後)

人時換算

  • 短縮分(分/回)×回数/日×稼働日×人時単価削減額

  • 削減人時の再配分先(増産・品質確認)も明記

粗利改善

  • 不良率改善(%)×出荷個数×粗利単価粗利増

  • 物流・検査外注の減など周辺費用も別立てで

投資回収

  • 投資総額−補助金=自己負担

  • (粗利増+人件費減−増加経費)÷自己負担回収月を算出


7. 見積・仕様・エビデンス(減点ポイントを潰す)

  • 仕様書ベースの相見積(センサー型式、画像処理fps、精度、治具点数 等を同一条件に)

  • 導入後の検収基準(タクト・歩留まり・稼働率の合否基準を先に置く)

  • 安全・法令(労働安全衛生、電気設備、データ保護の対応)

  • 交付決定前は支払い禁止を関係者に徹底(発注・契約・前払もNG)。ものづくり補助金総合サイト


8. 加点・特例の取り方(まず“器”を広げ、次に“点”を盛る)

  • 枠・類型や加点項目は回ごとに更新されます。**今回の要領の“加点”“審査項目”**を見て、取り切れるものを証憑付きで

  • 例:賃上げ・成長分野・GX/DX関連の取り組みを事実で証明(就業規則、賃金台帳、取組宣言、認定・登録の写し など)。

  • 要点は「根拠資料の同梱」。本文に書くだけでは加点にならないことが多いです。ものづくり補助金総合サイト


9. 直前チェックリスト(声に出して読む)

  • 結論が1文(何を導入し、何をどれだけ改善)

  • 現状データ(タクト・歩留まり・停止・遅延)が数字で

  • 対策→効果で置かれ、回収月が示されている

  • 仕様書(性能・インタフェース・検収基準)を添付

  • 相見積は同等仕様で2〜3社

  • 加点の証憑を添付(本文に“証憑名”を明記)

  • 交付決定前は発注ゼロの周知ができている

  • Jグランツ入力は完了、gBizIDプライムは有効(2〜3週かかる想定で前倒し)ミラサポplus 補助金・助成金 中小企業支援サイト


10. よくある質問

Q. 採択後、交付申請で金額が上がったら?
A. 交付審査で精査され、不適切分は減額・対象外になり得ます。上限は増えません。見積は早めに固め、同等仕様の相見積で妥当性を示しましょう。ものづくり補助金総合サイト

Q. どんな資料から作り始める?
A. 現場データ(タクト・停止・歩留まり)工程図仕様書相見積事業計画の順。Jグランツ入力は最後に一気にものづくり補助金総合サイト

Q. gBizIDがまだ無い…
A. プライムアカウントの取得に2〜3週間想定。今すぐ申請を。ミラサポplus 補助金・助成金 中小企業支援サイト